夕暮れ =2=

そんな状態が20分も続いただろうか。
めまいも収まってきたのか、おばあさんは、枯れ木のような足を折り曲げて、起きあがろうとした。
体を支えて、立ち上がらせ、肩を貸して、一緒にそろそろと歩き出す。

ここには、昭和24年から住んでいるとか、ボランティアで、花壇に花の植え替えをしている、とか、
ゆっくりゆっくり歩きながら、話をしてくれる。
お年は80台後半だろうか、私の母が生きていたら、同じくらいだなぁ、となんだか切なくなった。

道路から路地に入ったところに、古い家が建ち並ぶ一角がある。
はたして、おばあさんの家は、どうやらその中にあるようだ。
すぐそこ、のはずの家は、亀のような歩みで、はるか彼方に感じる。
古い二階建ての家が数軒かたまっている。
どうやら家の前に着いたようで、おばあさんは、ふるえる手で、ポーチから鍵を取りだした。
夫が代わりにガラスの引き戸の鍵を開け、上がりかまちに座らせ、靴を脱がす。

暗い玄関で、苦労して電球のひもを探して、見つけ出し、外灯もつける。
古い家だけれど、ゴミが散乱していることもなく、きちんとした印象だった。
隣の部屋には、布団も敷いてあり、とりあえず横になることはできそうだ。
だれかに電話しましょうか、なにか買ってきましょうか、といろいろ何回も聞いてみたが、
大丈夫だという返事なので、心残りだったけれど、家を後にした。

我が家に帰ると、HANAたちが飛びついてきて、そのいのちの明るさに目がくらむような思いがした。

おばあさんはKさんというお名前で、発作が収まれば、きちんとした生活を
されているようだったけれど、梅雨空の暗さに沈み込みそうな 古い家の玄関に
座り込んだままの姿は、今、思い出しても 胸を締め付けられる。














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Author:jhety
日光をこよなく愛する、アラ還です。
趣味は、山登り、スキー、カメラにピアノ(順不同)
東京と日光の二重生活も、早4年?
丁寧な生活が目標ながら、孫たちのパワーに
押されまくり、へとへとな毎日を送っています。

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